「デジタル強化」でマネタイズ:米国大手メディア企業”TIME”の新たな試み事例

News Article Advertisement Publication Media Journalism Concept

2016/04/01 マネタイズ公式ブログ 

Access UP

インターネットやモバイル端末の普及に伴い、雑誌や新聞といった従来の紙媒体に人々が接する時間は減少する傾向にあります。こういった状況に柔軟に対応した新たな形のメディアを生み出すことに挑戦しているのが、アメリカの大手雑誌社「Time Inc.」です。今回は、同社が一体どのような方法でデジタルネットワークの分野に進出しているかを見ながら、新たな形のメディアに挑戦する大切さを学んでみましょう。


メディア電子化による消費者の嗜好の変化



画像1

新聞や雑誌を含む書籍のデジタル化が進み、消費者はいつでもどこでも気軽に情報にアクセスできるという恩恵を受けています。しかし、メディア企業側は、こういった紙面上の従来の広告から得ていた収益の減少という問題に悩まされています。

2015年にNHKが実施した「NHK国民生活時間調査」によると、「新聞を読む」ことに費やす1日の平均時間は1995年から減少傾向にあることがわかります。

2(参照:2015年国民生活時間調査報告書|NHK放送文化研究所)

また、新聞を読む人の割合も下がってきています。特に10〜20代ではその傾向が顕著で、2015年度の結果では、1割にも満たないのが現状です。

 

3(参照:2015年国民生活時間調査報告書|NHK放送文化研究所)

では、なぜここまで新聞離れが起こっているのか考えてみましょう。原因の1つとして挙げられるのは、新聞以外にも情報を得られるメディアが増えたということです。現在、インターネット上には膨大な量の情報があふれ、わからないことがあるときは検索をかければすぐに必要な情報にたどり着けます。また、新聞や雑誌もデジタル化が進み、印刷された媒体を購入せずとも、こういったメディアにいつでもどこでもアクセスできるようになったのも大きな要因でしょう。

こうした現状から、広告収入という大きな収益源に頼っていた従来の経営方式では、新聞社や出版社が経営を続けることは難しくなっていきます。メディア企業は時代に流れに合った新たな戦略やメディア開発への挑戦が求められています。

次の章では、このような挑戦の事例として、新形態メディア開発への挑戦を積極的に行っている、アメリカの大手出版社Time Inc.の活動をご紹介します。


デジタル分野に力を入れるTime Inc.


Time Inc.は1922年に設立された、ニューヨークを拠点とするアメリカの出版社です。2016年現在では、社名でもあるTime誌を中心に、90を超えるさまざまなジャンルの雑誌ブランドを抱えており、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパやアジアにも支社を持つ企業へと成長を遂げています。

5(参照:Time Inc.)

Time Inc.の成長の裏には、柔軟な姿勢で人々のニーズに合わせたさまざまな分野・種類のメディアを提供していくという戦略があります。その一例が、2015年12月に設立された「Time Inc. Digital」という新部門。プレジデントにはデジタルメディアのベテランであるJennifer L. Wong氏が任命されました。Wong氏の使命は、デジタル広告やサブクリプションからの収益を含む、デジタルおよびインタラクティブ分野での戦略を立てることです。

Time Inc.は現在、Time.com、People.com、Sports Illustratedオンライン出版を含む60のデジタル資産を所有しています。同社が世界中に保持するマルチプラットフォームへの訪問者数は2015年には1億5千5百万人となっており、人気分野であるデジタル部門に力を入れるという戦略は、今後企業を成長させるために正しい選択であるといえるでしょう。ちなみに、この1億5 千5百万人という数字は、前年と比べて19%向上したもの。ソーシャルフットプリント(ソーシャルメディア上の活動)は45%向上して1億8千万へと伸び、なかでもビデオ観客数は86%向上と大きく動きました。


「GOLF LIVE」でライブメディアとコンテンツライブラリーの両方を豊かに


実際にTime Inc.が導入を試みた「GOLF LIVE」を見てみましょう。これは、毎週火曜日正午に30分のゴルフ専門番組をGOLF.COMのサイトで放映するというもの。2016年2月23日にデビューを果たしました。

1(参照:GOLF.com)

GOLF LIVEのスポンサーとなる企業は、大手ゴルフメーカーの「Callaway Golf」。番組放映時の広告だけでなく、特別コマやコンテンツの融合、クロスプロモーションを行うことで、両社のコラボレーションを試みます。当ライブ番組では、有名スポーツキャスターのRyan Asselta氏をホストに、30分という限られた放映時間のなかでバラエティー豊かなコンテンツを紹介します。

GOLF.comは、この番組を導入することで、ライブ放送による視聴者を増やすだけでなく、自社の保持するビデオコンテンツを増やすという目的も果たしています。ゴルフ界の有名人をゲストに迎えての放送が今後も予定されており、ゴルフファンにとって魅力の高いコンテンツを提供していく計画です。また、2016年内には「GOLF FILMS」という、ストーリーテリングを主体とした物語的動画シリーズの配信開始も予定しています。これまでゴルフに関する情報を「読む」場所であったGOLF.comを、今後ゴルフに関する情報を「見る」場所へと変化させる試みです。その効果に期待がかかります。

 

アジアでの確固たるプレゼンスの構築を目指す「Sports Illustrated TV」



画像2

Time Inc.のもう1つの新たな試みが、人気雑誌Sports Illustratedのブロードキャスト・デジタルネットワークの設立。香港をベースとするスポーツ放送局の「ASN」と提携して、2016年春にデビューを予定しています。この提携によりSports Illustratedは、ASNが抱えている「ASN」「ASN2 pay-TV sports channels」やそのウェブサイト、モバイルアプリを「Sports Illustrated」「Sports Illustrated2」としてリブランド。香港だけでなくフィリピン、シンガーポール、タイを含むアジア各国12エリア、20のTV局を通じて2,900万の家庭で放送されているASNとASN2を引き継ぐかたちとなります。

この提携により、Time Inc.は新たなプラットフォームを通じて世界的にその認知度を高めようとしています。2 社が提携することで、番組開発、世界のスポーツイベントの放送、VOD(ビデオ・オン・デマンド)購読、デジタル・モバイルプラットフォームの強化を図るのが目的。配信されるのは:
➢ Sports Illustratedブランドに含まれる「SI」「SI Kids」「FanSided(ファンのための特別サイト)」のオリジナル動画コンテンツ
➢ アメリカンフットボールの優勝戦「Super Bowl」
➢ 北米プロアイスホッケーの優勝戦「Stanley Cup Final」
➢ 毎年3月を通して開催される全米大学男子バスケットボール大会「NCAA March Madness」

といった、メジャースポーツの試合などが含まれる予定です。
このように、すでに多くの顧客を保持している企業と提携することで、Time Inc.は新たな分野へ進出する際にネックとなりがちな、「新規顧客の獲得」という壁への対策ができます。スポーツに興味のある人々が使用しているASNというサービスに自社のスポーツ関連コンテンツを融合させることで、ターゲット顧客のニーズにあったメディアの提供が可能となります。このようなメリットを生み出すことができる提携は、ビジネスを成長させるための戦略として賢い選択といえるでしょう。同社は、この提携を通じて魅力的なスポーツ放送ネットワークをつくり上げ、アジアでの確固たるプレゼンスを構築しようとしています。


アメリカ国外へのメディア侵略の開始


2016年に入って、Time Inc. は新たにTime Inc. InternationalのプレジデントとしてSteve Marcopoto氏を迎えました。Marcopoto氏は以前にもTime Inc. Asiaのプレジデントに任命されたことがあり、Turner Broadcasting Asia-Pacific社でもプレジデントを務めた、アジア方面でのメディア分野で豊富な経験をもつ人物です。

Time Inc. Internationalはすでに、世界の48の国・地域で147個のライセンス契約を結んでおり、「InStyle」や「Fortune」「People」といったブランドは、中国やインドで、その国専用の雑誌を発行しています(中国ではウェブ版も発行)。また、「Golf」は雑誌、ウェブの両方をオーストラリア、中国、韓国、マレーシアで展開中(台湾では、雑誌のみ)。Marcopoto氏は今後、デジタル、動画、テレビなどのプラットフォームを介し、アメリカ国外へとメディアを拡大するという目的の下、より広範囲での国際化を目指し戦略を練っています。


まとめ


1922年の設立から90年以上が経過し、Time Inc.社は世界的なメディア企業へと成長を遂げました。その成功の根底にあるのは、従来のビジネススタイルにとらわれず、市場のニーズを敏感に察知し、それに合わせたメディアを提供する柔軟なスタイル。企業がメディアをマネタイズにつなげていくうえで、新しい分野への進出を恐れず、広い視野を持つ重要性を教えてくれています。

参考:
➢ Time Inc. Appoints New Digital Chief|The Wall Street Journal
➢ ニュースが私を見つけるpart3 – 新聞が報じない新聞離れ -|BLOGOS
➢ 2015年国民生活時間調査報告書|NHK
➢ Time Inc. Elevates the Power of Its Digital Properties with the Appointment of Jennifer L. Wong to President of Time Inc. Digital|Time Inc.
➢ Time Inc.’s GOLF debuts new weekly show, GOLF LIVE|TNM
➢ Now Streaming on GOLF.com: Our New Weekly Show, GOLF LIVE |GOLF
➢ Sports Illustrated TV, Digital Channels to Launch in Asia With Hong Kong’s ASN|VARIETY
➢ Time Inc. to Launch Sports Illustrated Multi-Platform Broadcast and Digital Networks across Asia|Business Wire
➢ Time Inc. Appoints Steve Marcopoto President of Time Inc. International|Business Wire
ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当していました。

名称未設定


このエントリーをはてなブックマークに追加
Googleパートナーロゴ