アドブロッカーヘの挑戦状:アメリカのメディア企業が目指す「正しい」広告のあり方とは

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2016/06/06 マネタイズ公式ブログ 

AdBlocker

パブリッシャーの広告収入の前に大きく立ちはだかる壁……アドブロッカー。その使用率の増加に伴い、パブリッシャーは何らかの対策をとらねばならない難しい局面に立たされています。今回ご紹介するのは、「アドブロッカーは、コンテンツから違法に利益を得ようとする悪質なものだ」というパブリッシャー側の訴え。一丸となって立ち上がった、アメリカの大手メディア企業らのストーリーです。


アドブロッカー搭載のウェブブラウザー「Brave」登場

Cloud Computing Network Online Internet Storage Concept
Cloud Computing Network Online Internet Storage Concept

 

ことの発端は……
今回パブリッシャー側が立ち上がるきっかけとなったのは、Brave Software社(以下、「Brave社」)が2016年1月に登場させた「Brave」と呼ばれるウェブブラウザーです。Braveを開発したBrendan Eich氏は、JavaScriptプログラムランゲージのクリエーターとして知られており、Mozilla社のCEOを務めたこともある人物。

Braveの仕組みは、「押し付けがましい広告をブロックして閲覧時の環境を向上させると同時に、パブリッシャーには、読者からのビッドコインによるドネーションや、Braveがサイト上に挿入した特別広告の収益が回るようにする」というものです。ユーザーはパブリッシャーのコンテンツにアクセスできるものの、そこに表示される広告はパブリッシャーが掲示したものではなく、Braveが差し替えた独自の広告になってしまいます。

パブリッシャー側はこのシステムに対し、「明らかに違法行為だ」と怒りをおさえられません。こういったサービス提供への抗議として、The Newspaper Association of America(NAA:米国新聞協会) のメンバー17社は、「Brave社が行っていることは違法だ」という旨の書状をBrave社に送りました。そのなかでNAAは次のように述べています。

「我々のサイトやモバイルアプリケーションで提供されるニュース、カメラルポ、ビデオコンテンツ、特集記事などは、多額の費用をかけて調査、記録、編集、制作したものである。米国内だけでもパブリッシャー業界は年間50億ドルを超える費用を費やしており、こういった情報を我々がオンラインで無料配布したり低価格で提供できたりするのは、オンライン広告からの収益によるところが大きいのだ」

NAAのCEOであるDavid Chavern氏は、Brave社が自社で制作したコンテンツを提供するなら問題ないが、パブリッシャーが制作したコンテンツの裏で独自の広告システムを使いBrave社が収益を上げるのは違法だと主張しています。


NAAに対するBrave社の反論は

NAAが送った書状に対し、Brave社はすぐに自社の考えを発表しました。

➢ Brave社が行っていることは、NAAが主張するように、「パブリッシャーのサイトでパブリッシャーの広告を不正にBraveの広告と差し替える」というものではない。パブリッシャー自体が掲示している広告(第三者のトラッキングシステムが付いていないネイティブ広告を含む)には触れていない。
➢ Brave 社の目的はパブリッシャーの収益を不法に奪うことではない。Brave社の目的はよりよい広告ネットワークをつくることであり、このネットワークを使うことでBrave社はより多くの収益をパブリッシャーに回せるようになる。その額は現在パブリッシャーが第三者の広告から得ている収益より多い。
➢ NAAはパブリッシャーに渡る収益の割合が明示されていないと書状のなかで述べているが、その情報は正しくない。割合は1月に一般公開されている(パブリッシャー:55%、広告パートナー、Brave社、Braveユーザー:各15%)。

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(参照サイト:Brave.com)

➢ 新聞の広告収益は激減している。Brave社はより多くの広告収入をパブリッシャーに回し、ユーザーが直接パブリッシャーに支払いをできるシステムをつくることで、この問題を改善しようとしている。
➢ 悪質で危険なオンライン広告は、ユーザーのアドブロッカーのダウンロードを増長させている。ユーザーに対し法的措置をほのめかしたり、アドブロッカー・ブロッカーを使ったりすることは、ダウンロード数を減らす対策にはならない。
NAAの主張をBrave社は受け入れていないことがわかります。


The New York Timesの挑戦

業界のこういった動きのなかで、The New York Times(以下、「NY Times」)はアドブロッカーをブロックするテストを開始。サイトを訪問したユーザーがアドブロッカーを使用していることをシステムが察知した場合、ユーザーは記事が読めなくなってしまいます。

記事を読むことができないユーザーに対して、NY Timesが表示するメッセージは次のようなものです。

「優れたものは無料ではありません。あなたはアドブロッカーをインストールされましたが、広告は私たちのジャーナリズムをサポートする大切なものです。The New York Timesをお読みになりたければ、以下の2つのうちどちらかを選択してください。」

ここでNY Timesがユーザーに提案する解決策は以下の2つ。

1. 一定の費用を支払って購読者になる
2. NY Timesのサイトをホワイトリストに載せることで、アドブロッカーがサイト上で機能しないようにする

NY Timesの新たな取り組みの目的は、広告のブロックによりパブリッシャーがどのような損失を受けるのかユーザーに知ってもらい、NY Timesをホワイトリストに載せてもらうことだそう。アドブロッカーはあくまでもユーザーの「今」を便利にするためのもの。パブリッシャーが良質のコンテンツを提供し続けるために、デジタル広告は1つの大切な収入源として必要であることをユーザーに理解したもらうことで、今後さらによいコンテンツを提供できるようになると考えています。


コンテンツのブロックは最終ゴールではない

Female hand filling text Goal on grassland.
Female hand filling text Goal on grassland.

アドブロッカーヘの対策をとっているのはNY Timesだけではありません。ほかのパブリッシャーもさまざまな試みを実施しています。

イギリスのテレビ局「ITV」や「Channel 4」、ヨーロッパ最大のタブロイド紙「Bild」では、アドブロッカーユーザーのコンテンツをブロック。米国のYahooでは、アドブロッカーユーザーのYahooメールへのアクセスを不可能にしています。

確かに「コンテンツのブロック」や「ホワイトリスト」は、ユーザーのアドブロッカー使用を減らすための一時的な対策となり得ます。しかし、パブリッシャーの抱える「今後のメディア業界の収益をいかに確保するか」という問題を、根本的に解決する手段にはならないでしょう。

重要なのは、パブリッシャーとユーザーの両者が納得できる手段を見つけ出すこと。ユーザーに低価格の購読システムを提供し広告フリーでコンテンツを楽しめるようにしたり、過度の広告表示をやめてほかの広告手法に切り替えることでユーザーにストレスを与えないようにしたりといった対策を考える必要があります。それらのなかでどの対策がユーザーにとって効果を発揮するかを、正確に見極める目をもつことが大切です。


パブリッシャーの未来のために対策をとるべきとき

アドブロッカーはパブリッシャーにとって、自分たちの収益を奪いかねない脅威ですが、そのニーズや使用者数が多いのも現実です。多くのパブリッシャーはこの現実に危機感をもっており、対策と解決策を見出すべくさまざまな取り組みを試みています。パブリッシャーの未来を明るいものにするには、一時的な対策ではなく広告システムを根本的に見直す必要があるといえるでしょう。一度しっかりと立ち止まり、パブリッシャーとユーザーの両方が納得できる、広告におけるエコシステムの設立について、じっくり考えてみましょう。

参考:

 

ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当していました。

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