アドブロッカーヘの挑戦状:アメリカのメディア企業が目指す「正しい」広告のあり方とは

パブリッシャーの広告収入の前に大きく立ちはだかる壁……アドブロッカー。その使用率の増加に伴い、パブリッシャーは何らかの対策をとらねばならない難しい局面に立たされています。今回ご紹介するのは、「アドブロッカーは、コンテンツから違法に利益を得ようとする悪質なものだ」というパブリッシャー側の訴え。一丸となって立ち上がった、アメリカの大手メディア企業らのストーリーです。


アドブロッカー搭載のウェブブラウザー「Brave」登場

Cloud Computing Network Online Internet Storage Concept
Cloud Computing Network Online Internet Storage Concept

 

ことの発端は……
今回パブリッシャー側が立ち上がるきっかけとなったのは、Brave Software社(以下、「Brave社」)が2016年1月に登場させた「Brave」と呼ばれるウェブブラウザーです。Braveを開発したBrendan Eich氏は、JavaScriptプログラムランゲージのクリエーターとして知られており、Mozilla社のCEOを務めたこともある人物。

Braveの仕組みは、「押し付けがましい広告をブロックして閲覧時の環境を向上させると同時に、パブリッシャーには、読者からのビッドコインによるドネーションや、Braveがサイト上に挿入した特別広告の収益が回るようにする」というものです。ユーザーはパブリッシャーのコンテンツにアクセスできるものの、そこに表示される広告はパブリッシャーが掲示したものではなく、Braveが差し替えた独自の広告になってしまいます。

パブリッシャー側はこのシステムに対し、「明らかに違法行為だ」と怒りをおさえられません。こういったサービス提供への抗議として、The Newspaper Association of America(NAA:米国新聞協会) のメンバー17社は、「Brave社が行っていることは違法だ」という旨の書状をBrave社に送りました。そのなかでNAAは次のように述べています。

「我々のサイトやモバイルアプリケーションで提供されるニュース、カメラルポ、ビデオコンテンツ、特集記事などは、多額の費用をかけて調査、記録、編集、制作したものである。米国内だけでもパブリッシャー業界は年間50億ドルを超える費用を費やしており、こういった情報を我々がオンラインで無料配布したり低価格で提供できたりするのは、オンライン広告からの収益によるところが大きいのだ」

NAAのCEOであるDavid Chavern氏は、Brave社が自社で制作したコンテンツを提供するなら問題ないが、パブリッシャーが制作したコンテンツの裏で独自の広告システムを使いBrave社が収益を上げるのは違法だと主張しています。


NAAに対するBrave社の反論は

NAAが送った書状に対し、Brave社はすぐに自社の考えを発表しました。

➢ Brave社が行っていることは、NAAが主張するように、「パブリッシャーのサイトでパブリッシャーの広告を不正にBraveの広告と差し替える」というものではない。パブリッシャー自体が掲示している広告(第三者のトラッキングシステムが付いていないネイティブ広告を含む)には触れていない。
➢ Brave 社の目的はパブリッシャーの収益を不法に奪うことではない。Brave社の目的はよりよい広告ネットワークをつくることであり、このネットワークを使うことでBrave社はより多くの収益をパブリッシャーに回せるようになる。その額は現在パブリッシャーが第三者の広告から得ている収益より多い。
➢ NAAはパブリッシャーに渡る収益の割合が明示されていないと書状のなかで述べているが、その情報は正しくない。割合は1月に一般公開されている(パブリッシャー:55%、広告パートナー、Brave社、Braveユーザー:各15%)。

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(参照サイト:Brave.com)

➢ 新聞の広告収益は激減している。Brave社はより多くの広告収入をパブリッシャーに回し、ユーザーが直接パブリッシャーに支払いをできるシステムをつくることで、この問題を改善しようとしている。
➢ 悪質で危険なオンライン広告は、ユーザーのアドブロッカーのダウンロードを増長させている。ユーザーに対し法的措置をほのめかしたり、アドブロッカー・ブロッカーを使ったりすることは、ダウンロード数を減らす対策にはならない。
NAAの主張をBrave社は受け入れていないことがわかります。


The New York Timesの挑戦

業界のこういった動きのなかで、The New York Times(以下、「NY Times」)はアドブロッカーをブロックするテストを開始。サイトを訪問したユーザーがアドブロッカーを使用していることをシステムが察知した場合、ユーザーは記事が読めなくなってしまいます。

記事を読むことができないユーザーに対して、NY Timesが表示するメッセージは次のようなものです。

「優れたものは無料ではありません。あなたはアドブロッカーをインストールされましたが、広告は私たちのジャーナリズムをサポートする大切なものです。The New York Timesをお読みになりたければ、以下の2つのうちどちらかを選択してください。」

ここでNY Timesがユーザーに提案する解決策は以下の2つ。

1. 一定の費用を支払って購読者になる
2. NY Timesのサイトをホワイトリストに載せることで、アドブロッカーがサイト上で機能しないようにする

NY Timesの新たな取り組みの目的は、広告のブロックによりパブリッシャーがどのような損失を受けるのかユーザーに知ってもらい、NY Timesをホワイトリストに載せてもらうことだそう。アドブロッカーはあくまでもユーザーの「今」を便利にするためのもの。パブリッシャーが良質のコンテンツを提供し続けるために、デジタル広告は1つの大切な収入源として必要であることをユーザーに理解したもらうことで、今後さらによいコンテンツを提供できるようになると考えています。


コンテンツのブロックは最終ゴールではない

Female hand filling text Goal on grassland.
Female hand filling text Goal on grassland.

アドブロッカーヘの対策をとっているのはNY Timesだけではありません。ほかのパブリッシャーもさまざまな試みを実施しています。

イギリスのテレビ局「ITV」や「Channel 4」、ヨーロッパ最大のタブロイド紙「Bild」では、アドブロッカーユーザーのコンテンツをブロック。米国のYahooでは、アドブロッカーユーザーのYahooメールへのアクセスを不可能にしています。

確かに「コンテンツのブロック」や「ホワイトリスト」は、ユーザーのアドブロッカー使用を減らすための一時的な対策となり得ます。しかし、パブリッシャーの抱える「今後のメディア業界の収益をいかに確保するか」という問題を、根本的に解決する手段にはならないでしょう。

重要なのは、パブリッシャーとユーザーの両者が納得できる手段を見つけ出すこと。ユーザーに低価格の購読システムを提供し広告フリーでコンテンツを楽しめるようにしたり、過度の広告表示をやめてほかの広告手法に切り替えることでユーザーにストレスを与えないようにしたりといった対策を考える必要があります。それらのなかでどの対策がユーザーにとって効果を発揮するかを、正確に見極める目をもつことが大切です。


パブリッシャーの未来のために対策をとるべきとき

アドブロッカーはパブリッシャーにとって、自分たちの収益を奪いかねない脅威ですが、そのニーズや使用者数が多いのも現実です。多くのパブリッシャーはこの現実に危機感をもっており、対策と解決策を見出すべくさまざまな取り組みを試みています。パブリッシャーの未来を明るいものにするには、一時的な対策ではなく広告システムを根本的に見直す必要があるといえるでしょう。一度しっかりと立ち止まり、パブリッシャーとユーザーの両方が納得できる、広告におけるエコシステムの設立について、じっくり考えてみましょう。

参考:

 

ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当していました。

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「デジタル強化」でマネタイズ:米国大手メディア企業”TIME”の新たな試み事例

インターネットやモバイル端末の普及に伴い、雑誌や新聞といった従来の紙媒体に人々が接する時間は減少する傾向にあります。こういった状況に柔軟に対応した新たな形のメディアを生み出すことに挑戦しているのが、アメリカの大手雑誌社「Time Inc.」です。今回は、同社が一体どのような方法でデジタルネットワークの分野に進出しているかを見ながら、新たな形のメディアに挑戦する大切さを学んでみましょう。


メディア電子化による消費者の嗜好の変化



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新聞や雑誌を含む書籍のデジタル化が進み、消費者はいつでもどこでも気軽に情報にアクセスできるという恩恵を受けています。しかし、メディア企業側は、こういった紙面上の従来の広告から得ていた収益の減少という問題に悩まされています。

2015年にNHKが実施した「NHK国民生活時間調査」によると、「新聞を読む」ことに費やす1日の平均時間は1995年から減少傾向にあることがわかります。

2(参照:2015年国民生活時間調査報告書|NHK放送文化研究所)

また、新聞を読む人の割合も下がってきています。特に10〜20代ではその傾向が顕著で、2015年度の結果では、1割にも満たないのが現状です。

 

3(参照:2015年国民生活時間調査報告書|NHK放送文化研究所)

では、なぜここまで新聞離れが起こっているのか考えてみましょう。原因の1つとして挙げられるのは、新聞以外にも情報を得られるメディアが増えたということです。現在、インターネット上には膨大な量の情報があふれ、わからないことがあるときは検索をかければすぐに必要な情報にたどり着けます。また、新聞や雑誌もデジタル化が進み、印刷された媒体を購入せずとも、こういったメディアにいつでもどこでもアクセスできるようになったのも大きな要因でしょう。

こうした現状から、広告収入という大きな収益源に頼っていた従来の経営方式では、新聞社や出版社が経営を続けることは難しくなっていきます。メディア企業は時代に流れに合った新たな戦略やメディア開発への挑戦が求められています。

次の章では、このような挑戦の事例として、新形態メディア開発への挑戦を積極的に行っている、アメリカの大手出版社Time Inc.の活動をご紹介します。


デジタル分野に力を入れるTime Inc.


Time Inc.は1922年に設立された、ニューヨークを拠点とするアメリカの出版社です。2016年現在では、社名でもあるTime誌を中心に、90を超えるさまざまなジャンルの雑誌ブランドを抱えており、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパやアジアにも支社を持つ企業へと成長を遂げています。

5(参照:Time Inc.)

Time Inc.の成長の裏には、柔軟な姿勢で人々のニーズに合わせたさまざまな分野・種類のメディアを提供していくという戦略があります。その一例が、2015年12月に設立された「Time Inc. Digital」という新部門。プレジデントにはデジタルメディアのベテランであるJennifer L. Wong氏が任命されました。Wong氏の使命は、デジタル広告やサブクリプションからの収益を含む、デジタルおよびインタラクティブ分野での戦略を立てることです。

Time Inc.は現在、Time.com、People.com、Sports Illustratedオンライン出版を含む60のデジタル資産を所有しています。同社が世界中に保持するマルチプラットフォームへの訪問者数は2015年には1億5千5百万人となっており、人気分野であるデジタル部門に力を入れるという戦略は、今後企業を成長させるために正しい選択であるといえるでしょう。ちなみに、この1億5 千5百万人という数字は、前年と比べて19%向上したもの。ソーシャルフットプリント(ソーシャルメディア上の活動)は45%向上して1億8千万へと伸び、なかでもビデオ観客数は86%向上と大きく動きました。


「GOLF LIVE」でライブメディアとコンテンツライブラリーの両方を豊かに


実際にTime Inc.が導入を試みた「GOLF LIVE」を見てみましょう。これは、毎週火曜日正午に30分のゴルフ専門番組をGOLF.COMのサイトで放映するというもの。2016年2月23日にデビューを果たしました。

1(参照:GOLF.com)

GOLF LIVEのスポンサーとなる企業は、大手ゴルフメーカーの「Callaway Golf」。番組放映時の広告だけでなく、特別コマやコンテンツの融合、クロスプロモーションを行うことで、両社のコラボレーションを試みます。当ライブ番組では、有名スポーツキャスターのRyan Asselta氏をホストに、30分という限られた放映時間のなかでバラエティー豊かなコンテンツを紹介します。

GOLF.comは、この番組を導入することで、ライブ放送による視聴者を増やすだけでなく、自社の保持するビデオコンテンツを増やすという目的も果たしています。ゴルフ界の有名人をゲストに迎えての放送が今後も予定されており、ゴルフファンにとって魅力の高いコンテンツを提供していく計画です。また、2016年内には「GOLF FILMS」という、ストーリーテリングを主体とした物語的動画シリーズの配信開始も予定しています。これまでゴルフに関する情報を「読む」場所であったGOLF.comを、今後ゴルフに関する情報を「見る」場所へと変化させる試みです。その効果に期待がかかります。

 

アジアでの確固たるプレゼンスの構築を目指す「Sports Illustrated TV」



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Time Inc.のもう1つの新たな試みが、人気雑誌Sports Illustratedのブロードキャスト・デジタルネットワークの設立。香港をベースとするスポーツ放送局の「ASN」と提携して、2016年春にデビューを予定しています。この提携によりSports Illustratedは、ASNが抱えている「ASN」「ASN2 pay-TV sports channels」やそのウェブサイト、モバイルアプリを「Sports Illustrated」「Sports Illustrated2」としてリブランド。香港だけでなくフィリピン、シンガーポール、タイを含むアジア各国12エリア、20のTV局を通じて2,900万の家庭で放送されているASNとASN2を引き継ぐかたちとなります。

この提携により、Time Inc.は新たなプラットフォームを通じて世界的にその認知度を高めようとしています。2 社が提携することで、番組開発、世界のスポーツイベントの放送、VOD(ビデオ・オン・デマンド)購読、デジタル・モバイルプラットフォームの強化を図るのが目的。配信されるのは:
➢ Sports Illustratedブランドに含まれる「SI」「SI Kids」「FanSided(ファンのための特別サイト)」のオリジナル動画コンテンツ
➢ アメリカンフットボールの優勝戦「Super Bowl」
➢ 北米プロアイスホッケーの優勝戦「Stanley Cup Final」
➢ 毎年3月を通して開催される全米大学男子バスケットボール大会「NCAA March Madness」

といった、メジャースポーツの試合などが含まれる予定です。
このように、すでに多くの顧客を保持している企業と提携することで、Time Inc.は新たな分野へ進出する際にネックとなりがちな、「新規顧客の獲得」という壁への対策ができます。スポーツに興味のある人々が使用しているASNというサービスに自社のスポーツ関連コンテンツを融合させることで、ターゲット顧客のニーズにあったメディアの提供が可能となります。このようなメリットを生み出すことができる提携は、ビジネスを成長させるための戦略として賢い選択といえるでしょう。同社は、この提携を通じて魅力的なスポーツ放送ネットワークをつくり上げ、アジアでの確固たるプレゼンスを構築しようとしています。


アメリカ国外へのメディア侵略の開始


2016年に入って、Time Inc. は新たにTime Inc. InternationalのプレジデントとしてSteve Marcopoto氏を迎えました。Marcopoto氏は以前にもTime Inc. Asiaのプレジデントに任命されたことがあり、Turner Broadcasting Asia-Pacific社でもプレジデントを務めた、アジア方面でのメディア分野で豊富な経験をもつ人物です。

Time Inc. Internationalはすでに、世界の48の国・地域で147個のライセンス契約を結んでおり、「InStyle」や「Fortune」「People」といったブランドは、中国やインドで、その国専用の雑誌を発行しています(中国ではウェブ版も発行)。また、「Golf」は雑誌、ウェブの両方をオーストラリア、中国、韓国、マレーシアで展開中(台湾では、雑誌のみ)。Marcopoto氏は今後、デジタル、動画、テレビなどのプラットフォームを介し、アメリカ国外へとメディアを拡大するという目的の下、より広範囲での国際化を目指し戦略を練っています。


まとめ


1922年の設立から90年以上が経過し、Time Inc.社は世界的なメディア企業へと成長を遂げました。その成功の根底にあるのは、従来のビジネススタイルにとらわれず、市場のニーズを敏感に察知し、それに合わせたメディアを提供する柔軟なスタイル。企業がメディアをマネタイズにつなげていくうえで、新しい分野への進出を恐れず、広い視野を持つ重要性を教えてくれています。

参考:
➢ Time Inc. Appoints New Digital Chief|The Wall Street Journal
➢ ニュースが私を見つけるpart3 – 新聞が報じない新聞離れ -|BLOGOS
➢ 2015年国民生活時間調査報告書|NHK
➢ Time Inc. Elevates the Power of Its Digital Properties with the Appointment of Jennifer L. Wong to President of Time Inc. Digital|Time Inc.
➢ Time Inc.’s GOLF debuts new weekly show, GOLF LIVE|TNM
➢ Now Streaming on GOLF.com: Our New Weekly Show, GOLF LIVE |GOLF
➢ Sports Illustrated TV, Digital Channels to Launch in Asia With Hong Kong’s ASN|VARIETY
➢ Time Inc. to Launch Sports Illustrated Multi-Platform Broadcast and Digital Networks across Asia|Business Wire
➢ Time Inc. Appoints Steve Marcopoto President of Time Inc. International|Business Wire
ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当していました。

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どこまでできる、ブログのマネタイズ:成功事例とエキスパートからのアドバイス特集

ブログは、誰でも簡単に低コストで始められるメディアとして多くのマーケターが取り入れているコンテンツです。その分ライバルも多く、数あるブログのなかから消費者に選んでもらえるものを作り上げ、それを管理しながらマネタイズにつなげるのは決して容易ではありません。

そこで、今回ご紹介したいのは、たった1年で3万ドルの収益を上げた旅行ブログのマネタイズ術です。さらに、ブログマネタイズのエキスパートたちがアドバイスしてくれた「ブログマネタイズの秘けつ」もご紹介。「ただのブログ」から「稼げるブログ」に成長するために必要な要素とは一体何なのか考えてみましょう。


事例:My Tan Feet

マネタイズを成功させたブログとして紹介するのは、2013年中盤に設立された「My Tan Feet」。「旅行ブログ」という個人ブログのカテゴリーでありながら、最初の1年で3万ドルの収益を上げたブログです。このブログのトピックは中央アメリカ南部に位置する「コスタリカ共和国」。コスタリカを訪れる旅行者に役立つ情報を提供することにポイントを置いたものです。


ブログ開設のきっかけ

このブログを運営するサマンサさんは、2012年8月にコスタリカに移住したことをきっかけとしてブログを始めました。コスタリカに関するブログはほかにもありましたが、サマンサさんとその夫であるイェイソンさんは、「海外からの旅行者」と「地元の人」の2つの視点からコンテンツ提供を行うことで、より信頼出来る役立つ情報を提供することにしました。

ブログ設立前の事前調査で分かったのは、コスタリカを訪れる人々がインターネットでローカル情報を検索しても、「情報が何年も更新されていない」「システムがダウンしていて必要なチケットが買えない」といったことが原因で、旅行の計画をうまく立てられないという現状でした。そこでサマンサさんたちは「人々がコスタリカに関する情報をリサーチする際に、自分たちのウェブサイトが信頼できる情報源となればよい」と考え、そこにビジネスチャンスを見出したのです。


タイトルやロゴに個性を

DIverse People Holding Text Individuality
DIverse People Holding Text Individuality


人気の高いブログにはキャッチーなタイトルが付けられているものが多く、このブログの「My Tan Feet(私の日焼けした足)」というタイトルもその例にもれません。初めてコスタリカのビーチを訪れた際に、自分たちの足が日焼けした思い出から付けられたこの名前は、これからコスタリカを訪れようとしている人々に、心地よいビーチで自分の足が日に焼けていくイメージを思い起こさせてくれます。

ブログの開設後、サマンサさんとイェイソンさんはウェブサイトやロゴのデザインに取り掛かりました。「可愛らしさを持ちながら、ブログのテーマである旅行を彷彿(ほうふつ)とさせるもの」……そんなサマンサさんの思いから生まれたのが、こちらのブランドロゴ。

ロゴ画像
ロゴ設定後は、YouTubeチャンネルへの登録やバラエティーに富んだコンテンツの作成に取り組んだそうです。


マネタイズに向け始動

準備を終えたサマンサさんたちは、マネタイズに向けて新たな動きを始めました。最初に行ったのは、GoogleのAdSenseの導入。しかしAdSenseで収益を得るためには、多くのサイト訪問者を得ながら、その訪問者に広告バナーをクリックしてもらわなければならないという難関があります。それに加え、サイトに表示される広告が多いというマイナス点もあり、サマンサさんたちがその使用を最低限に抑えることにしました。そこで、次はAmazonとのアフェリエイトに挑戦。自分たちがコスタリカを旅行した際に実際に使ったトラベルギアのレビュー投稿を始めました。

ここで注目したいのは、アフェリエイトを開始しても、ブログの趣旨はあくまでも「訪問者に役立つ情報の提供」としたことです。宣伝色の強いコンテンツを前面に押し出さず、アフェリエイトの商品がどのようなシーンでどのように役立つのかをアドバイスしたり活用例を紹介したりすることで、訪問者が商品に興味を持ってリンクをクリックするように工夫しました。

次に、サマンサさんたちは、地元のホテルやビジネスを対象としたマネタイズに着手します。ローカルビジネス(企業)にメールを送り、興味があると返信してくれた企業を訪問してレビューや動画の作成を実施。ひとつひとつの企業に対して、オーナーとの対談やそのビジネスの歴史を学ぶ努力を惜しまなかったそうです。

 

訪問者の満足度向上への対策
ブログ開設後数か月で、閲覧数はひと月で1万を超えるまでに増加。トラフィックが増えたことで、ブログ閲覧のスピードや質が落ちることのないよう、ホスティングサービスもレベルアップさせました。また、ローカルビジネスと特別契約を結ぶことで、ブログの訪問者にスペシャル割引を提供。訪問者の満足度が上がったことで口コミ効果が発生し、それがマネタイズの成果を向上させていきました。

ブログマネタイズを成功させるためには、「一貫性、修練そして情熱」の3つが必要だとサマンサさんたちはいいます。好きなこと、興味があることだからこそ、人々の役に立つコンテンツを作成し続けることができる。この成功事例は、それを裏付けてくれるものだといえるのではないでしょうか。

もちろん、ブログのマネタイズを成功させるのに役立つ要素はほかにもたくさんあります。次の章では、それらの要素についてみていきましょう。


エキスパートが教えるブログマネタイズの秘けつとは?

ここでは、ブログマネタイズのエキスパートと呼ばれる人々が「firstsiteguide.com」というサイトに寄稿したブログマネタイズの秘けつをご紹介します。

Adrienne Smith:まずは、マネタイズより「自分について知ってもらう」「観客を増やす」「ロイヤルなファンを作る」といった項目にポイントを置く。こういったポイントをクリアしてこそ、人々は「この人から買おう」と思ってくれるようになる。

Charles Coxhead:ブログ訪問者の「数」ではなく「質」にこだわる。マネタイズにつながりやすいのは、一般消費者より、ニッチ市場の消費者。コンテンツの内容をニッチで深みのあるものにし、その他大勢のコンテンツに差をつけよう。リマーケティングも是非実践したい。

Christina Hills:ブログは、素早く簡単に自分(自社)の意見を発信するのに最適のプラットフォーム。伝えたいメッセージの発信源としてブログを活用していこう。また、読者がブログ内の投稿をSNSで簡単にシェアできるように設定しておくこと。シェア用ツールやプラグインを導入することで、拡散効果を上げることができる。ブログからメルマガ登録ができるようにするのもいいアイデアである。

David Risley:ブログの構成を「購買過程のトランスフォーメーション(移行)」に沿って作り上げよう。ブログの内容を「初期(訪問者の現状)」から「最終地点(顧客が最終的に達成したい目的)」へという流れに沿うように変えていく。そして各過程に沿って値段や内容の異なる商品・サービスを数種類用意することで、見込み顧客(メルマガ登録者など)をより効率よくセールスファネルに引き込んでいこう。初期の見込み顧客向けには購入しやすい低価格の商品を、顧客には会員制サイトやより高額のオファーを提供していく。

Lauren Hooker:会員制コンテンツの作成も効果がある。ebookの作成+販売(一度作れば半永久的に繰り返し使える)を行ったり、ブログ内容からさらに踏み込んだ内容を知りたい人向けに、オンラインコースを実施したりすることでマネタイズにつなげていこう。

Mitch Mitchell:ブログテーマをニッチにするのはよいが、ニッチにしすぎないよう注意しよう。ブログをマネタイズにつなげるには、コンテンツを提供して人々をブログに引きつけ続けなければならない。ニッチにしすぎたために、すぐにネタ切れ……というのでは失敗してしまう。

Thomas E. Hanna:ブログをマネタイズにつなげるには、最初に「ゴール」をしっかり定めることが大切である。ブログは、広告やスポンサーからの収入、コンサルテーションやメンバーシップからの収入、ウェビナーや講座の開催、ebookの出版などさまざまなマネタイズにつなげることができるが、「何をしたいか」「どうやってその目標を成し遂げたいか」をきちんと考えていなければならない。ブログ単独の戦略を練るのではなく、それに沿ったマーケティング戦略を練るのも忘れないように。


見込み顧客を引きつける大切なコンテンツ
ブログをマネタイズにつなげるには、消費者がどういった情報を求めているかニーズ調査を行い、それに対して自社ができることは何かを考えたうえで、「企業としてのゴール」を定めましょう。ゴールが定まったら、そこに到達するために必要なことは何か、効率のよい戦略はどのようなものかといったポイントを考え、マーケティング戦略を練っていきましょう。マネタイズにつながるブログは「書きたいことを書く場所」ではありません。マネタイズを成功させるためには、ブログは「見込み顧客や顧客を引きつけるためのコンテンツ」であり、マーケティング戦略の一環であることをしっかり認識しておきましょう。

画像参考:
How we got more than $30,000 in 12 months with Mytanfeet|Mytanfeet
34 Experts Reveal 3 Best Blog Monetization Tips|firstsiteguide.com

ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当していました。
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アド・ブロッカーの脅威:メディア業界のこれからに与えるインパクトとは?

従来の新聞や雑誌といった情報発信源を含む、さまざまなコンテンツがオンラインで消費者に届けられるようになった今の世の中。消費者にとっては、より多くの情報を無料または低価格で入手できるという、便利な状況になりました。しかし、企業にとっては、こういったコンテンツをいかに収益につなげていくかが大きな課題となっており、マネタイズの方法を見いだせなければ企業の存続に関わります。そこで今回は、多くの企業がマネタイズの一環として投資を行っているオンライン広告に注目し、その現状とこれからの在り方を考えてみましょう。


消費者はなぜアド・ブロッカーを使うのか?

Question bubble with clip hanging on the line with blue background.
Question bubble with clip hanging on the line with blue background.

 

企業は、各メディアのオンライン化への対策として「オンライン広告」に投資しています。しかしそれに対抗するかのように、消費者の間には「アド・ブロッカー」が普及し始めています。アド・ブロッカーとは、消費者がサイトを訪問する際に、広告が表示されないようにブロックしてしまうテクノロジーのこと。企業にとっては収入源になっている広告が消費者に見てもらえないという大きな問題となっています。アド・ブロッカーの現状とともに、Forbes社が実際に行ったアド・ブロッカー対策とその成果を見てみましょう。

アドテク企業の「Teads」が9,000人を対象に実施した「なぜ、人々はアド・ブロッカーを使用するのか」という調査の結果が2016年1月初旬に発表されました。

この調査によって、人々が最も煩わしいと感じる広告の形態は「プレロール」であることがわかりました。プレロール広告とはユーザーがコンテンツにアクセスした際に、コンテンツを見る前に流れる動画広告で、動画コンテンツで配信されることの多い形態です。実に41%の回答者が、アド・ブロッカーをインストールしたのはプレロール形式の広告が原因だと回答しており、企業が収益を得るために配信している広告が、逆に消費者を広告そのものから遠ざけてしまっているという実態が見えてきました。

また、ポップアップ広告に抵抗を感じる消費者も多く、「ポップアップ広告は煩わしい」と回答したのは88%に上りました。既に、大手出版社の多くはポップアップ広告の利用を停止しており、業界では「ポップアップ広告は消費者に受け入れられない」という認識が定着し始めているようです。

アド・ブロッカーを利用している人に、どのような経緯でアド・ブロッカーを使用することになったか聞いたところ、44%は「友人からその存在を聞いた」と回答。そのうちの26%は口伝えで、残り18%はSNSに投稿されたりシェアされたコンテンツでその存在を知ったそうです。これは、オンライン広告の現状に消費者に不満を抱えており、友人が発信したアド・ブロッカーの情報が、その現状への対策として魅力に見えたということを示しているのではないでしょうか。


Forbes社の挑戦

企業がメディアでマネタイズを行ううえで、広告からの収益はなくてはならない存在です。しかし、上記の調査結果が示唆するように、広告に対してネガティブなイメージを持つ消費者は決して少なくありません。こうした現状を受けて、世界有数の経済誌であるForbes社が行った挑戦をご紹介しましょう。

2015年12月、Forbes社はアド・ブロッカーを利用しているサイト訪問者に、あるメッセージを送りました。その概要は「ここから先に進むためには、アド・ブロッカーをオフにしてください。もしアド・ブロッカーをオフにしてくれたら、その代わりに表示する広告の量を減らすことに同意します」というもの。消費者と正面から向き合う戦略を実行したのです。

その結果、なんと44%近くのユーザーがアド・ブロッカーをオフに。これにより、本来ならブロックされていた広告のうち、1,500万本の広告からのマネタイズに成功したそうです。

カルファルニア州のパームデザートで開催された「Interactive Advertising Bureau’s Annual Leadership Meeting」というイベントでも、この結果が大きな話題となりました。当イベントに参加していた人々は「どうやって消費者とエンゲージするか」、「どうしたらアド・ブロッカーに走ってしまった彼らを取り戻すことができるのか」を話し合っていたそうです。


アド・ブロッカーに対する業界の動きは?

Forbes社の調査結果をもとに、いくつかの企業は今後のアド・ブロッカーへの対策法の模索を始めています。

メディアのエコシステム構成をサポートする「Sourcepoint」や、メディアサービスプロバイダーの「Optimal」では、今回の調査結果を参考に、アド・ブロッカーを使用しているユーザーに企業がメッセージを送れるサービスの提供を計画しています。

また、ユーザーのデジタル体験向上サービスを提供する「Ghostery」でも、同じようなサービスの開始を近々行うとしています。Ghosteryのサービス内容は、FacebookやGoogleを含む500社を超える企業がインターネット上に設置している、消費者の動向トラッカーやビーコンなどを検出するもので、どちらかというと「消費者の味方」というポジションです。

そのGhosteryが実施しようとしているサービスは、自社のサービスを利用している消費者に対しFornes社と同じようなメッセージを掲載し、ユーザーがその内容に同意するかを確認するというもの。同意した場合はそのページに表示されている広告は「ホワイトリスト(スパムでない)」と判断され、その後はアド・ブロッカーにブロックされなくなります。

Ghosteryはこの計画を実施する前に、「ユーザーに対してどういった内容のメッセージを表示するべきか」、「同じようなサービスを提供するSourcepointやOptimalと提携するサイトをユーザーが訪れた場合、これらのサイトが表示するメッセージとGhosteryのメッセージがダブルで表示されないためにはどうすればよいか」といった課題をクリアしなければならないとしています。


企業としてできること

Computer Cloud Computing Storage Media Digital Concept
Computer Cloud Computing Storage Media Digital Concept


消費者の多くは、サイトを訪問するたびに表示される過剰な広告や、サイトが訪問者の閲覧履歴を追跡していることに対し、不安や不満を感じているのです。こういった状況のなかで、消費者にアド・ブロッカーをオフにしてもらうためには、企業からの歩み寄りの姿勢が求められます。

Ghorsteryが19,194人を対象に行った調査によると、このうちの40%が「広告やトラッカーがハッキングの被害につながってしまうのではないか」と恐れを抱いているという結果が出ています。また、20%は消費者の動向を探るトラッカーは、サイトのロード時間を遅くしていると感じており、17%はプライバシーの問題があると感じていることもわかっています。

こういった消費者の不安や不満を解消するには、自社の利益ばかりを考えずに、表示する広告や使用するトラッカーとセキュリティ、ユーザー体験のバランスをうまく取っていく必要があるのです。


企業と消費者の両方が納得できる環境作りを

メディアのマネタイズに欠かせない広告収入。企業と消費者の双方が納得できる環境作りを考える時期に来ているようです。いくら広告でマネタイズを目指しても、それが消費者をメディアから遠ざける要因になってしまっては意味がありません。今後、企業としてどういった歩み寄りを行うべきが、一度しっかり考えてみましょう。

参考:
Ghostery to Test Ad-Blocker Appeal Messages|AdvertisingAge
Study: Pre-Roll Ads Dramatically Increasing Ad-Block Installs|AdvertisingAge
Inside Forbes: From ‘Original Sin’ To Ad Blockers — And What The Future Holds|Forbes

ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当していました。

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AdSense収益を最大化させるパソコン向けレイアウト検証

Google AdSenseで成果を上げるためには「良質なコンテンツを投稿し続ける」ことと、「適切な広告配置」が重要なポイントになります。基本的にアクセス数と広告のクリック率が高まれば高まるほどGoogle AdSenseの収益は増大します。効果的な広告配置場所を理解し、自社のウェブサイト運営ポリシーと適合させた上で、最適な広告位置を検証しましょう。

人間の目の動きを意識した広告配置を心がける

ブログのレイアウトを考える上で、人間の目の動きの特性を考慮した上でレイアウトを組み立て、伝えたいコンテンツ(あるいは広告)に視線を効率的に誘導することを考える必要があります。

あなたがブログやウェブサイトを閲覧している時、どのような順序で見ているでしょうか?大多数の人が「特に意識せず見ている」ことでしょう。しかし人間はウェブサイトを見る時に、無意識のうちに決まったパターンの目の動かし方をすると言われています。それがZの法則やFの法則と言われる法則で、視線がアルファベットの「Z」や「F」の字に則した動きをすることから名づけられています。
続きを読む AdSense収益を最大化させるパソコン向けレイアウト検証

AdSense収益を最大化させるスマートフォン向けレイアウト検証

前回の記事ではパソコン向けの広告配置について述べましたが、現状ではスマートフォンからウェブサイトを閲覧する比率の方が高いウェブサイトも数多く存在します。7割以上がスマートフォンやタブレット端末からの訪問者というウェブサイトも珍しくありません。

スマートフォン向けサイトを作る上で一番重要なポイントはユーザーの利便性の向上です。スマートフォンから訪問してきたユーザーは、操作性の悪いウェブサイトに不快感を示す傾向が強いです。 続きを読む AdSense収益を最大化させるスマートフォン向けレイアウト検証

Google Certified Publishing Partnerフォーエム公式ブログ開設のご挨拶

この度、株式会社フォーエムの公式サイトのリニューアルに伴い、Google AdSenseを中心としたアドネットワーク最適化やメディア収益化全般に関わる情報を提供するフォーエム公式ブログの運営を開始しました。

Google AdSenseにはヘルプセンターやInside AdSenseという名称のGoogle AdSense運営チームによる公式ブログも存在します。

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