【インタビュー:tenki.jp】DFPとプライベートオークションの活用で収益性の底上げに成功、その方法とは?

天気予報専門サイト「tenki.jp」はユーザーに課金を行わず、広告収入のみで運営している。かつては、GoogleのAdSenseやAd Exchangeを中心に復数のアドネットワークを利用しており、日々の広告管理では人的な労力を必要としていた。

Googleが「DoubleClick for Publishers(以下、DFP)」を発表して間もなく、tenki.jpはDFPの導入に踏み切った。DFP導入で得たメリット、tenki.jpにおける活用方法をtenki.jpの運営を主導している池田さんにうかがった。


100%広告収入で運営するメディア事業として

もう10年以上前ですが、Yahoo!Japanで天気プロデューサー兼ディレクターをしていました。長らく天気とインターネットという軸で仕事をしています。

tenki.jpは歴史が長く、母体は1990年代からあります。当時は気象庁の外郭団体であった日本気象協会が中心になって、天気のサイトを作ったのがはじまりです。今は日本気象協会にALiNKインターネットがジョインして共同事業という形で運営をおこなっています。tenki.jpは、純広告とアドネットワークを組み合わせ、100%広告収入で運営するようにしています。課金は一切おこなっていません。


天候と親和性が高いものは指数化して表示

DFPは、メインのアドサーバーとして使用しています。無料版と有料版がありますが、無料版を使用しています。有料版で提供されている機能を用いても、現時点では収益性はそう上がらないという判断です。

アドサーバーは、DFPのほかにも別会社が提供しているものと自前のものも使用していますが、DFPの割合が最も高いです。自前のものは、例えば天候と連動する広告など、ほかではできないものに使っています。洗濯用洗剤なら晴れの日は通常の洗剤、雨の日は部屋干しの洗剤を表示するという具合です。

小売りで販売される製品には天気と親和性があるものがあり、天候で受発注を調整したりします。飲料やアイスは有名ですが、ほかにも気温が高くなると梅のおにぎりが売れ、肉のおにぎりが売れなくなることが分かっています。「ウェザーマーチャンダイズ」とも言われています。

天気と親和性があるものはtenki.jpで指数を作成し、表示しています。洗濯指数やビール指数などです。面白いところでは「のど飴指数」があります。天気の記録とPOSデータを分析したら親和性があると分かり、サイトで表示しています。こうした指数は広告として使われることがあります。ネイティブ広告に近いですね。

DFPを導入する前から、AdSenseやAd ExchangeでGoogle製品を使用していました。DFPが登場して比較的早い段階から使用しています。2012年末頃からです。初年度だけですぐに売上が1.5倍以上になりました。以降はとんとんと積み上がっているという状態です。


チューニング労力の削減、ターゲティング広告で売上増

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DFPを導入して、これまで内部で人的にチューニングしていたことがDFPで簡易的にできるようになりました。広告の設定は「ウォーターフォール」と言われる優先度が高い順に設定します。キャンペーンなど特別な広告が入ると設定を変更するなど、これまでは常に人的なチューニングが必要とされていました。

これを、DFPを介すことで、ウォーターフォールの設定が一元管理できるようになり、更にDFPの機能であるダイナミックアロケーションを活用することで収益を効率的に高めることができるようになりました。

配信設定の柔軟性も高まりました。カスタムターゲティングという機能を活用することで、特定の記事や条件に絞った広告配信も可能になります。

tenki.jpでは、天気を発表する都道府県や市区町村ごとに個別ページ(掲載面)をもっているので、例えば「東京都の豊島区のページ」と「埼玉県の川越市のページ」のファーストビュー枠だけに広告を配信する、といったことを容易に実現できます。

DFPでは指定した地域のオーディエンスに絞って配信するターゲティング機能が存在するのですが、地域別に掲載面を保有する天気サイトの特長を活かし、あえてオーディエンスターゲティングは使わずに、掲載面をターゲティングすることで、他社媒体と差異化しています。

また、フリークエンシーキャップといって、同一ユーザーに対する広告の表示回数の指定もできますので、特定の広告キャンペーンに対して、関連性の高い地域に効果的な回数分の広告を掲載するという設定も可能です。ある調査によると、「ユーザーに10.1回リーチをかけると購入に至る」というデータもあるそうです。

天気情報は老若男女が見るコンテンツなので、広告代理店からは「ユーザーに色が無い」と昔から言われていまして、広告条件をセグメント化して配信するには難しいサイトでした。例えば女性誌サイトなら読者は女性が多数ですから、純広告を出しやすいのです。

そういった背景の中で、tenki.jpは昨今のアドテクノロジーの進化を追い風に、着実にPVとUUを伸ばし、いまでは年間15億PVを超える規模まで成長することができ、ターゲットやセグメント配信でも高い売上を達成できるようになってきました。


発想の転換、純広告よりPAを優先して全体の広告単価を底上げする

Googleの商品にはプライベートオークション(以下、PA)とオープンオークション(以下、OA)があります。前者は招待されたバイヤーさんのみ参加できるオークションです。OAにはない商品を出すなどして単価を高くできます。DFPはPAとOAを組み合わせて設定できるため、バランスよく使い分けができます。いずれのオークションにしても、広告単価が高いのがGoogleのいいところです。

PAは単価が高くなりますが、閉じた世界なので多くは売れません。Googleに出している在庫のうち、PAは5%程度です。しかしGoogleからの売上の約40%を占めています。単価が高いからです。

収益性が高いため、tenki.jpではPAに力を入れています。一般的には純広告の優先度をトップにすえ、その下にPAやOA、ほかのSSPを設定するところ、tenki.jpではPAを最も高い優先度にしています。ここはtenki.jpの独特なところだと思います。PAに注力するのは単価が高いだけではなく、DFPで広告効果の測定を定量的に判断できるためメディア側でコントロールがしやすいのも理由です。

通常は純広告の価格を高く設定し、高い広告を売ることに労力をかけます。残りが余剰在庫となり、PA、OA、SSPで補います。しかし高い広告を売ることは営業的には簡単ではありません。tenki.jpではPAを最上位にすえているので、純広告を高く売ることに労力をあまりかけることがありません。加えて、全体の広告単価を底上げすることにもつながるのです。発想の逆転です。


試行錯誤には失敗も。「ビューアブルは時期尚早でした」

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私自身はGoogleのAdSenseから利用しているのである程度慣れているものの、全てを知り尽くしてはいません。試行錯誤しながら使い方を模索しています。

最近の失敗は「ビューアブル」です。昨年にGoogleが、ディスプレイ広告の入札方法をCPMからvCPMに移行すると発表しました。vCPMとはビューアブルを保証する販売方法なのですが、これにより媒体側の広告料金の底上げにつながると考えられています。

そこでtenki.jpでは早々にページ下部にある広告に対して、スクロールして広告ポジションに到達したら広告を呼び出す実装をおこないました。ところが失敗でした。広告の在庫が減ってしまいました。広告単価のプラスより在庫消失のマイナスのほうが大きかったのです。現時点では時期尚早ということで、元に戻しました。


ウォーターフォールからヘッダー入札へ

今後期待する技術としてはヘッダー入札があります。ちょうど最近、Rubicon Projectのヘッダー入札ソリューション「FastLane」をtenki.jpに実装したところです。国内では初の事例です。

これまでDFPの利点をお話してきましたが、実はDFPが必ずしも収益を最大化するとは限りません。ダイナミックアロケーションで設定する最低落札価格(フロアプライス)は、固定の単価を設定する仕組みなので、フロアプライス以上の高単価の広告が存在しても、実際にはGoogleのAd Exchangeに勝つことができないのです。

そこで開発されたのがヘッダー入札ソリューションだと言われています。媒体ページのヘッダー部分に特別なタグを埋め込むことで、Googleが運営するAd ExchangeとサードパーティーのAd Exchangeが限りなく公平に競争することが可能になります。

まだ導入直後で十分なデータがありませんが、将来性があると思うので力を入れていきたいです。Googleも同様のソリューションがリリースされるようなので、そちらもどのようなものか楽しみにしています。


最後に

tenki.jpは天気がテーマなので最先端技術のイメージはないようですが、先進的な技術にも取り組んでいます。ヘッダー入札含めアドテクノロジーは新しい技術が生まれています。

広告主が広告の予算を有効活用できれば、結果的に出稿し続けてもらえることになり広告媒体側もハッピーとなります。なかなか表からは見えないところですが、媒体としての役割をいろんな面から研ぎ澄ましていきたいと考えています。

マネタイズ事例:ブログを月4万ドルの収益につなげた「Beardbrand」

企業メディアのマネタイズを成功させるためには一体どの程度の投資が必要だと思いますか?

企業によって、マーケティングにかけられる費用はまちまちです。しかし、「低コストで効率のよいマーケティングを行い、マネタイズを成功させたい」というのは、多くの企業が持つ共通の思いではないでしょうか。今回紹介するアメリカのBeardbrand社は、Eric Bandholz氏が個人ブログを月4万ドルの収益を上げるブランドへと成長させた事例です。初期費用をほとんどかけずにマネタイズを成功させたその手腕は一体どのようなものなのか見てみましょう。


「そこに市場があるのか」を見極めるセンス
ブログを始めるにあたり、「人々に興味を持ってもらえるテーマとは何か」「そこにマネタイズにつながる市場があるのか」を見極めるセンスは重要なものです。今回ご紹介するBeardbrand社の最初のステップとなったブログテーマは、Eric Bandholz氏の趣味である「ヒゲ」という一風変わったものでした。このヒゲというユニークな市場に目をつけるまでの経緯は一体どのようなものだったのでしょう。

Bandholz氏は起業前、Bank of Americaのウェルネスマネジメント部門であるMerrill Lynchの、ファイナンシャルアドバイザーというエリートポジションに就いていました。しかし、職種的に「自由にヒゲを生やす」ということが好意的に受け入れられない現実に落胆し、転職してフリーランスのグラフィックデザイナーになったというユニークな職歴の持ち主でもあります。

そんなBandholz氏ですが、自分の趣味である「ヒゲ」をビジネスにできるかもしれない……と考えるようになったきっかけは、2012年に参加した「West Coast Beard and Mustache Championship」(大会参加者150名、観客数1,000人以上)と呼ばれる、ヒゲコンテストでした。コンテストに参加したことで、「ヒゲに興味があるのは自分だけではない……」と、人々の「ヒゲ」に対する興味を感じ取ったBandholz氏は、ヒゲに関するコンテンツを投稿するブログを開始。その結果、ロイヤルファンを着実に獲得し続け、後に「ヒゲを生やした男性のための高級商品」という、これまでにない、野でのビジネスの可能性を見いだしたそうです。


初期投資は一人頭わずか4千ドル
Beardbrandを設立するにあたりBandholz氏は「Startup Weekend」というイベントに参加しました。このイベントは2007年に始まったもので、世界70か国、210都市で活動しています。

イベント参加者は最初に、スタートアップに関するプラスやマイナスについて学ぶところから始め、その後、自分のアイデアのピッチを行います。各参加者のピッチ終了後、全アイデアの中からビジネス化できそうなものが15から20ほど選ばれ、それらは実際の起業に向けて「アイデアの内容の確認」「顧客からのフィードバック収集」「プロトタイプの作成」といったステップに進んでいきます。

このイベントでBandholz氏が出したアイデアは「ヒゲを生やしたテレビホストが、世界中のすごいヒゲを紹介していく」というものでした。このアイデアは「楽しいけれど起業につなげるには物足りない」と判断され、残念ながら次のステップまで進むことはできませんでした。

しかしBandholz氏は諦めません。「そこにニーズはあるはず」という信念のもとに、協力者2名とともに、起業に向けて動き出したのです。初期投資として2人がブランドにつぎ込んだ金額は、一人頭4千ドルで、決して高額ではありませんでした。協力者のReinders氏は商品の調達や卸売りの管理を、もう1人のMcGee氏は運用や戦略立案を担当し、Bandholz氏がマーケティングの責任者となり、それぞれの長所を活かして効率よくビジネスの展開を行いました。ブランド立ち上げの要となった最初の商品は、自分たちで考案した処方をもとに、少量ずつを制作。また、ブログで取り上げたことのあるヒゲ用商品の販売元と交渉し、肌を保湿しフケを防ぐヒゲ用のオイルや、スタイリング用のワックスといった商品の卸売りをさせてもらうことに成功しました。

2012年の起業当初の売り上げ自体は、それほど多くありませんでしたが、2013年1月のNY Timesニューヨーク・タイムズに掲載された「The Taming of the Beard」で、「ヒゲに関するエキスパートの1人」としてBandholz氏が紹介されたことが、ブランドの転機に。記事が発表されるタイミングに合わせてオンラインストアを始動し、その後はYouTube、Reddit、Tumblrといったプラットフォームを通じて、ブランドの確立を行っていったのです。

Beardbrandにとってさらなるステップアップのきっかけとなったのが、アメリカの人気投資バラエティー番組「Shark Tank」に出演したことです。番組内での投資は受けられなかったものの、放映後のウェブトラフィックやオンラインでの売り上げは3倍になり、ブティックや美容院にも商品を取り扱ってもらえるようになりました。収益の8割はオンラインセールスで、残りの2割はこういったブティックや美容院からのものだそうです。


ブランド確立こそが重要ポイント

Brand Branding Marketing Commercial Name Concept
Brand Branding Marketing Commercial Name Concept

Bandholz氏は、多くのスタートアップ企業が抱える問題として、「商品を売る」ことに集中しすぎて「ブランドの確立」を怠っていることを指摘しています。企業として成長を続けマネタイズにつなげていくために、ブランドとしての地位の確立は、欠かせない要素であると彼は言います。

ブランドとしての地位を確立するためには時間も費用もかかるし、「売り上げ」のように企業へのプラスが数字で見えない分、そのことに意識を集中させることは難しいものです。しかし、ブランドを築くことによってロイヤリティーの高い顧客を確保し、口コミ効果を得られれば、結果として企業の価値を高めたり、顧客が商品をより高い値段で購入してくれるようになったりといった、長期的なメリットにつながります。
Beardbrandがブランド確立のために実際に使用したマーケティング手法には、

➢ 企業概念を伝えるためのウェブサイトの設立
➢ 自社のビジョンを共有する動画や広告の作成
➢ 名刺やPR商品を用意し、これらをバラエティーに富んだプラットフォームで宣伝
➢ 商品のパッケージングなどにも「自社のブランドらしさ」が出るようこだわりを持ってデザイン
といったものがありました。ブランドとして作り上げたいイメージを明確にしておくことで、マーケティング用に準備するコンテンツやメディアにも統一感を持たせることができるのです。

Beardbrandが1年で遂げた成長は?Bearbrandが設立1年で成し遂げた業績はどのようなものだったのでしょう。Bandholz氏がredditで発表した内容は、
➢ 1年未満でひと月の売り上げは0から12万ドルへと向上

➢ 業界平均を上回るリピート率
➢ メルマガ登録者は7,000人以上。メール開封率46.6%、メールクリック率13%
➢ ユーザーが商品に関するレビューや体験報告を、自ら進んでソーシャルメディアでシェアしてくれる
➢ 顧客が商品をBeadnrandから購入するのは、企業のビジョンや配信動画の効果であると言ってくれる
といったものでした。売り上げの向上はもちろん素晴らしいですが、メルマガやメディアに関する情報を見ると、消費者を引きつけるブランドづくりに見事に成功しているようです。


Bandholz氏の考える理想のマネタイズとは
マネタイズの成功に向け、企業はさまざまな決断を迫られることがあり、時としてその決断はマイナスの結果を招いてしまうこともあります。しかしBandholz氏は、企業が商品やマーケティングに投資を行ううえで、「そこから学ぶものがあれば使ったお金や時間は無駄にはならない」と言います。マイナスの結果も、その過ちを学んで次に活かすことができるのならば、それでもよいではないかと考えているそうです。

また、商品やサービスを提供するうえで本当に大切なのは、消費者に「企業の経営者や創業者はどんな人か」「どんなストーリーを抱えているか」を理解してもらうことで、なぜその商品やサービスを購入するべきかを伝えることです。こういった要素とともに、なぜ自社がそのビジネスを作り上げていくのかという信念を明確にすることで、消費者に「なぜその商品やサービスを買うべきなのか」を伝わり、結果的にマネタイズの成功につながっていくそうです。


マネタイズを目指すならブランドの体制を整えることから

Man holding razor against brick wall
Man holding razor against brick wall

今回の事例を教訓として得られるマネタイズを成功させるカギは、「いかに多くの投資を行えるか」ではなく、「どのようにブランドとしての体制を整えていくか」が重要であるということです。企業のスローガンは何か……企業として顧客に伝えたいメッセージはどんなものか……自社の商品やサービスを使うことで、消費者にどのようなメリットを与えることができるのか……こういったポイントをしっかりと考えた上で、ブレのないブランドを築き上げ、マネタイズを目指していきましょう。

参考:
How One Man Listened to His Community, Then Built a $40k Per Month Ecommerce Business in Under a Year|shopify
This Entrepreneur Turned His Beard Into a Brand|Inc
Beardbrand’s guide to building a brand|reddit
OUR STORY STARTS HERE|BeardBrand

 

ライタープロフィール:
Texas A&M University、経済学部卒。福岡出身、テキサス在住。大学卒業後、化粧品や医薬品の臨床試験を行う米国企業のアジア部署に就職。部署責任者として、世界各国の企業相手にマーケティングを担当。

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